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当時の先端技術を注いだリッターVツインスポーツ「TL1000S(VT51A)」

大排気量のV型2気筒と言えば国内ではアメリカンのイメージが強くなるが、海外に目を向ければドゥカティやハーレーダビッドソンといった代表的なメーカーが採用しているエンジンの配列形式だ(ドゥカティは正確にはLツインとなる)。1997年から登場し始めたVツインのスポーツモデルによって、4気筒メインの国内のリッタークラスも少しずつ変化していくことになる。その代表格がホンダ・VTR1000F・ファイアーストーム(SC36)と、スズキ・TL1000S(VT51A)だ。

丸味を帯びたマイルドな外観デザインとは裏腹に、レーシングテクノロジーが注ぎ込まれ、最新の装備を誇ったのがTL1000Sになる。セミカムギヤトレインの995cc・Vツインエンジンに、インジェクションや新気導入システムSRADを採用。TL1000Sを象徴するアルミトラスフレームに搭載し、足回りはフロントにGSX-R750と同径のφ43mm倒立フォーク、リアにはロータリーダンパーを採用。Vツインながらも車体はコンパクト化が図られ、現代的なディメンションとレーシーなハンドリングを実現したのだ。

国内モデルとしては1997年から1998年の2年間と短い期間だったが、1998年にはレース参戦を意識したTL1000R(VT52A)も追加され、2003年にはTL1000Sの後継モデルとなるSV1000S(VT54A)の国内モデルが登場。同時にカウルなしのネイキッドモデルSV1000(VT54A)もラインアップした。2005年にはSV1000Sに統合され、2007年までラインアップし終了となる。2010年代は並列も含めた「2気筒」の元気が良いことから、再度、リッターVツインスポーツの登場を期待したいが、その前に、パイオニアとも言えるTL1000Sのスポーツ性を一度は味わっておきたいところだ。他モデルに比べて安価に入手できるのも魅力である。